先日のyahooニュースにこのような記事が出ていました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/390a7d2f69cafa32343a677a1d7add749fb8fb26
まだ速報ベースであり、具体的な経緯は分かりませんが、このような酸欠による労災はたびたび発生しています。
酸欠の労災は致死率が高く、その危険性は調べればいくらでも出てくると思いますが、
少しでも多くの方に危険性を知ってもらいたく、筆を執らせて頂きます。
【酸素欠乏】
酸素欠乏とは、名前の通り酸素が欠乏した状態であり、酸素濃度が18 %未満の状態を指します。
我々生物は普段、空気中の酸素を取り込んで、その一部を消費することで生きています。
取り込まれた酸素は全身で消費されますが、その消費量の内、20 %が脳を占めています。
そのため、少しの間でも酸素が供給されない状態が続くと、脳への酸素供給が絶たれ、
脳に不可逆な崩壊が生じ、重篤な障害や、最悪の場合死に至ります。
空気中の酸素濃度は約21 %であり、吐き出す際は約16 %まで下がります。
何らかの原因で酸素濃度が16 %未満になっている空気はそれが酸素を含んでいたとしても、
肺から酸素を奪う空気となってしまうため、酸欠を引き起こしてしまします。
酸素欠乏で怖いのは、酸素欠乏状態が目で見てわからないという点です。
目には見えないにもかかわらず、一呼吸でも死に至る危険性があります。
同僚が倒れ、助けるために近づいたところ、救助しようとした方も酸欠で倒れてしまうという、
二次災害が起こりやすいのも怖いところです。
【酸素欠乏になりやすい場所、状況】
酸素欠乏が発生しやすいな場所は正直いくらでもありますが、
化学系の工場では以下のような場所、状況で発生しやすいです。
①鉄製タンクの内部
みなさんは自転車を放置しすぎて、スプロケット(後輪についている、チェーンの動力を軸に伝える歯車の一種)に錆が発生したという経験をお持ちだと思います。
錆が発生する原因は、鉄(Fe)が空気中の酸素と反応し、赤錆(Fe2O3)に変化するためです。
この反応の速度は非常に遅く、解放された空間であれば反応により消費された酸素は周囲から補充されますが、タンク内部のような閉鎖空間では、錆の発生により酸素はされても補充はされないため、酸素欠乏状態が発生します。
②窒素パージ後のタンク
工場では例えば危険物タンクを解放する場合、抜液後いきなり空気を送り込んでしまうと、爆発性の可燃性混合気が生じてしまうため、着火源があった場合に爆発してしまいます。
そのため、不燃性の窒素で数度置換したのちに、最終的に空気で置換することが多いです。
このような作業を行った場所では、空気での置換不足により酸素欠乏状態になることがあります。
③地下ピットやくぼみなどの、他と比べて低い位置にある場所
酸素の重さは32 g/mol、空気の重さは28.8 /molであり、それに対して二酸化炭素は44 g/mol、プロパン以上の炭化水素系ガス、アルゴンは空気より重いです。
そのため、それらの重いガスは地下ピットなど低い位置の場所に溜まりやすく、酸素欠乏状態になることがあります
上にあげた場所以外でも、酸素欠乏が発生しうる場所はいくらでもあります。
酸素欠乏危険作業主任者ではより詳しく学ぶことができます。
興味のある方はぜひ受講してみてください。
【終わりに】
本記事をご覧いただきありがとうございました。
ここまでで酸素欠乏の危険性を知っていただけたと思います。
一人でも多くの人に酸欠作業の危険性を知ってもらい、一件でも多くの労災が減れば幸いです。