化学物質は適切に扱わなければ健康や環境に悪影響を及ぼす可能性があります。
化学物質を多量に取り扱う化学プラントにおいては、事故の予防に向けてリスクアセスメントが実施されます。
本記事ではリスクアセスメントとはどういうものかについて解説したいと思います。また、リスクとはどういったものかについては過去の記事で解説していますので、良ければご覧ください。
【リスクアセスメントの概要】
リスクアセスメントとはリスクマネジメントを構成するステップの1つであり、 「リスク特定」、「リスク分析」、「リスク評価」という一連のプロセスを指します。
上記の定義だと少し理解が難しいので、化学プラントを例にすると、
リスク特定(化学プラント内に存在するハザードを基に危険シナリオを抽出し)、リスク分析(危険シナリオの影響度や発生確率を鑑みてリスクレベルを決定し)、リスク評価(基準と比較してどのような対応を実施するかを決定します)、
という流れになります。
【リスクアセスメントの目的】
事故を防止するためには、系内にどのようなリスクが存在するかを知らなければなりません。リスクアセスメントを実施する目的は化学プラント内に存在するリスクを把握し、適切な対策を取るためです。
リスクアセスメントを実施することで、有限であるリソースをどのように振り分けるかの判断も可能となります。
【リスクアセスメントの流れ】
①リスク特定(ハザード特定)
ISO31000におけるリスクの定義は、「目的に対する不確かさの影響」(正負両方の影響を考慮する)となっていますが、化学プラントでリスクアセスメントを実施する際には負の影響のみを考えることが多いです。
リスクアセスメントの実施目的が化学物質による爆発、火災や漏洩、労働災害の防止であることが主だからです。ゆえに、リスクの特定についてはハザードの特定と言い換えてよいでしょう。
ハザードの特定においては、使用されている物質についてSDSや書籍を基に、可燃性、発がん性、環境影響などを調査します。また、反応性の高い物質については事故事例調査も実施します。
調査で得られた物質のハザード情報を基に、最終事象に至るまでのシナリオを作成します。
リスク特定ではHAZOP、FMEA、What-If分析などの分析手法を用いることもあります。
②リスク分析
リスク分析においては、①で得られたシナリオにおけるリスクの算出を実施します。
下記のようなリスクマトリクスが使用されることもあります。

この図では定性的にしかリスクを算出していませんが、手法によっては数値的に算出することもできます。
③リスク評価
リスク評価の段階では、リスク分析において得られたリスクをあらかじめ決めておいたリスク基準と比較し、許容可能か否かを判断します。
許容可能であると判断されれば、そこでそのシナリオについてのリスクアセスメントは終了します。
一方で許容できないと判断された場合、許容可能になるようにリスク低減策を実施する、もしくはあまりにも対策に労力がかかりすぎる場合には、そのリスクを保有する、などのリスク対応を実施します。
以上です。
記事を見ていただきありがとうございました。